「わが人生行路」

 著者 小川 哲男

 

 

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 著者は戦争の時代を体験された世代、生きるために幾多の辛酸をなめる苦難を乗り越えた人である。それにしても昔のことをよく覚えておられる。良いことも失敗も自慢や誇張なく淡々と綴られている。
 大正生まれの私の父も新天地を求めてツテを頼って朝鮮に渡っている。厳寒の北鮮での思い出などを話していた。当時の日本は欧米諸国に伍する国力を誇り若者も海外に雄飛する大きな夢と希望を抱いていた時代である。若い時は船乗りとして日本全国を回り、陸に上がってからはモーレツサラリーマンとして相撲部で鍛えた馬力で次々に成果を上げていった。福岡県みやま市のたこ焼き八ちゃん堂の項では、私も創業者ご夫妻と一度食事をしたご縁もあり懐かしく読ませて頂いた。
 著者の88年の歩みは常に人との縁を大切にされ、悪いことをしたら針の山に登らされるという幼い頃の祖母の教えが原点になっている。著者が言う20代は力で、30代は頭で、40代は人格で、60代は顔で稼ぐを、身をもって示された山あり谷ありの人生に敬意を表したい。

 

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