暮らしと方言の色揚げ

内山一兄・郷田敏男

 
 
 
 
 
 
 

小祭り(願立て)


「ドーン ドーン」と神殿の大太鼓が鳴り響きます。

灯りをともした神前の三方には米・野菜・なり果物・塩・いりこ・昆布するめ、

それに真鯛の一献据りなど、種々の山の幸海の幸が供えられます。

「コン時ジャッタナイ オ百度参リ ショーッタツァ?」

「ソータイ。オ宮ン横ゾノ 榊ノ葉バ採ッテキテ ソリバ一枚ヅツ

大宮司サンカラ貰テ オ拝ミョーッタタイ」。

太鼓橋のそばの二の鳥居をくぐり、堂々巡りをして拝殿の前で手を合わせます。

三方に百枚の榊の葉が溜まれば百度参りがすむのです。


 この春先の祭りを小祭り・春祭り、または願立てとも言います。

五穀豊穣・満作の目処がつくころの感謝祭を、大祭り・秋祭り・願成就と呼ぶのです。

初冬の師走、いよいよ取り入れが済み、収納が終われば村を挙げての村祭りと統きます。


 願立ての神事がすむと、

座元の講中一同は拝殿の板の間に茣蓙を広げて車座になり、直会に移ります。

各自持参の重箱から大根・人蔘の千切り、むきみの中入り、

豆腐・蒟蒻の色付けなどの塩気を出し合います。

これを肴に冷酒を酌み交わして四方山話に花が咲くのです。

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