暮らしと方言の色揚げ

内山一兄・郷田敏男

 
 
 
 
 
 
 

針供養さん


昔はいろいろの供養があったものです。

針供養・鎌供養、それにくど箒や火起こし竹の供養までする所もありました。

これは暮らしに役立った物への感謝と、物を粗末にしないという証でもあったのです。


かつては育児・炊事、それに裁縫は、女の生命だと言われたものです。

今でこそ洗い張りや針仕事にはめったにお目にかかれませんが、

女の夜なべは決まって針仕事でした。

毎晩暗い電灯の下で、てくり・股引き・足袋などをそそくり(繕う)、

雑巾を縫っていた老いた母の姿を思い出します。


針供養の日は天下御免の女の娯楽日で、

もえ風呂(共同風呂)も昼からわき、

めかした小娘たちは娘宿に集まります。

床の間に裁縫用具の鋏・尺・へら・のし・針山などを飾ってお光を供え供物を並べるのです。

折れた針は盆の上の豆腐に突き刺して、その供養をします。


「アリャ 学校ニ上ッテ 裁縫バ 習ウ頃グレカラ 加タリョーッタ ゴタンノヤ」

「ソーソー。小娘ンコロガ 一番弾ミョーッタタノ」

「米ノ二合半ニ 銭ノ五銭モ出シオーテ 女ンヨリエ ヒカリノゴタットタイ」。

 

   

八女方言歳時記へ戻る

 

次項→



ページの上段へ PAGE UP