暮らしと方言の色揚げ

内山一兄・郷田敏男

 
 
 
 
 
 
 

祇園さん


田植えがすみ、田の草取り、雁爪打ちが一段落して、

田の根付きや分蘖(ぶんけつ)も順調な見通しが立つと、

いよいよ祇園さん(夏祭り)のよどがやってきます。

田圃のまんぎりも(仕事のひと区切り)

地域によって期日のずれがあります。

祇園も順ぐりにのんぼりのほうから下方のほうへ回ってきます。


新暦では夏休みに入る前後から八月上旬の

立秋までの一八日間を、土用と呼びます。

一年中で最も暑いのです。

土用の暑い真っ盛りに、祇園祭りが各地で繰り広げられるのです。


土用入りの三日間の天候が、

この秋の作物の豊区を占う大切な日であると言います。

かんかん照りで夕立でもあれば満作疑いなく、

稲田に虫が付かぬと喜ばれたものです。

そう、夏休みを「土用よけ」と呼び、

「土用干し」と言って衣類の虫干しもしていました。


「小若者ノ時ャ テ−ゲ遠カ所サンデン ヨサリ 祇園ノヨドニ 参リョッタガ・・・」

「子供時ャ 一家内 アルキガ 楽シミジャッタタイ」

「祇園ニャ シャッチ サンキラ饅頭タイ」

「ソレニ 酒ン肴ガ 鱈ン煮染デナイ」。

暑い盛りのよどですから、物によってはもう夕るし方には傷みはじめます。

いきおい、酒の肴は長持ちする酢の物−瓜におばやき(鯨の皮うら)

を入れたなますやくらげの酢の物などが多かったようです。

 

   

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