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暮らしと方言の色揚げ内山一兄・郷田敏男 |
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二月も下旬、はなやぐ弥生ももう間近で、ひと雨ごとに暖かくなってきます。
新暦で繰れば三月中・下旬に当たり、
桜も綻びはじめます。農家ではそろそろ農耕作業の準備に忙しくなります。
鎮守の杜の氏神様に豊穣祈願の小祭り(御勧請事)がやってきます。
「アリャ 昔ャ 旧ノ二月二十六日ジャッタゲナ」
「ソータイ。新デュート 三月の中頃ニナッタイ」
「何デン 新ニ代ワッテカラ 一月遅ラケーテ 三月二十六日ニ 決メタッジャロダイ」。
小祭りは旧二月下旬の戊の日を当てたようです。
作の神様への祈願ですから、十干の第五「土の兄」を当てています。「火の弟」の次です。
旧暦はその年々によって少しずれてくる不便がありますから、
後には旧二月二十六日に固定されました。が、さらに新暦に替えるときに、
一か月遅れの三月二十六日に決められたのです。
清掃された神社の境内は、うららの日和に綻びはじめた桜ですっかり春の装いです。
幔幕を張り巡らした拝殿で、いよいよ小祭りがはじまります。
風が和んで幟は垂れて、その文字は定かではありませんが、
「祥瑞雲漲於社上」「五穀俵満於庭前」とめでたい意が読みとれます。