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暮らしと方言の色揚げ内山一兄・郷田敏男 |
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旧暦の八月朔日は新暦で繰れば八月の夏休みの終わりになったり、
学校がはじまる九月に入ったりします。
田面をそよぐ風もさらめき、
朝晩はめっきりかんえ(時候)がよくなります。
稲田は穂孕み期に入り、走り穂がちらほら見えます。
いよいよ実りの秋にさしかかるのです。
八朔とは八月一日の節を言います。
古書を繙くと、八月朔日を「田の実の節」
「田の面の節」「憑の節句」などと言うとあります。
かつては朝廷に対して公卿・幕府などからこの日に太刀・馬などを献上し、
これに対してお返しをする重要な行事のある日であったのです。
「正旦に次ぎたる重儀なり」とあるのを見てもこれが窺えます。
後にはこの行事が諸大名・武家・商人・農民の間まで広く伝わり、
趣向を変えて広まってきたのです。
物知り顔でしかつめらしい長講釈に、古老の松つぁん・
鶴さんはいささかたじろぎ、しびれを切らして口を出します。
「八朔チャ 秋ノ満作ノ祈願ジャロ トモヨッタリャ イロイロン謂ン アタイノ−」
「ソ−言ヤ アッチャコッチャ マ−ダ 八朔サンノヨドン アリョッ所ンアロガ・・・」
「ソ−ソ−。○○ノ八朔サンナ ゴレグサンヨド(五霊宮) チョ−ッタタイ。
ココガ アンマリ賑ワウモンバ ヨソンヨドハオッ取ラレッシモ−テ 影ン薄ウ ナットットタイ」。