暮らしと方言の色揚げ

内山一兄・郷田敏男

 
 
 
 
 
 
 

お釈迦さん


 旧の四月−燦々と陽光が降り注ぎ、百花撩乱、華やいだ色彩になります。

つつじが満開になり、とりわけ真っ赤な小花をつけた山つつじが目を奪います。

薫風かおる好季、野にも山にも若葉がかおり、八日には「お釈迦さん」がやってきます。

灌仏会あるいは花祭りとも言います。


咲きほこっているいろいろの花で花御堂を造って、中央に釈迦降誕像を安置します。

参詣人は甘茶を汲んでこの像の頭から注ぐのです。

お釈迦さんと言えば、甘茶と天道花を思い出します。


「オ釈迦サンニハ 小瓶持ッテ シャッチ甘茶バ貰イ 行キョッタノヤ」

「アリバ 茶飲ミ茶碗半分グレ 飲マニャンジャッタガ アンマリ 旨カモンジャ ナカッタバノ」

「残リバ アッチコッチ ブリ撒キョーッタガ・・・。虫ノ 出来ンゴッテロデ」。

便所や流し元など不潔で虫が湧きやすいからです。

そう、せんちんどこ(便所)・たんぽ(排水溜)などとくに陰湿で、昔はずいぶん不潔な所だったのです。


「蚊帳ン引キ初メデ 蚊帳バ陽ニヘーテ コレ 甘茶バ 吹ッカキョーッタノヤ」

「甘茶バカケトクト 蚊ノヘーランテロデッサイ・・・」。

環境が不潔ですから、お釈迦さんのころにはすでに早い所では蚊が現われることもあったのです。

甘茶を吹きかけておけば蚊が入ってこないと言われていました。


早朝坪先に天道花を立てます。

「ナッタケ高カ竿ニ 春菊トツツジノ花バ 揚ゲテノヤ・・・。アリャ 天道花チョーッタカノ?」

「ソータイ。天道花。アリバ 後デ 箪笥ンナケ 入レトクト 虫ノ付カンテロデノヤ」。

 

   

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