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暮らしと方言の色揚げ内山一兄・郷田敏男 |
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旧暦五月にさしかかります。
陽光燦々、滴るばかりの鮮緑で薫風さわやかな好季です。
小麦が日増しに熟れてきます。
いよいよ麦秋です。
下旬ともなれば梅雨に入るので、その前に麦ごんのを一気呵成に片付けます。
一段落した田圃では夕方からぼさ焼きや菜殻火のふすりが棚引きます。
苗代の苗も順調に育って朝露になびき、
三五日苗は田植えに最適だと言います。
こんのがすむと、息をつく間もなく田植えの準備に取りかかるのです。
こんのは山つきと平坦部とでは多少期日のずれはあるものの、
同じ部落では一斉にはじまりほとんど同時に終わります。
ところが、田植えは水利がからんでそうはいかないのです。
田圃は一枚毎に段差がありますから、
水掛かりのよいのんぼり(上流)から何日もかかって
順次下方の田へと移って植えていくのです。
田植えには苗取り・代掻き・綱張り・
苗配り・植え方と一連の段取りがあって、
人手を揃えるのに苦労します。
ここに、溝浚えなどの結いや田植えの手間替えなど、
農村特有の仕組みが発生してくるのです。
下方の人は上方の縁者・付き合いの家へ田植えの加勢に行きます。
いわゆる手間替えで、下方のときにはまた上方からそのお返しに加勢に出るのです。