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暮らしと方言の色揚げ内山一兄・郷田敏男 |
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八朔の日の農民の素朴な物品の贈答が、
逆に宮廷・幕府に移行したことはすでに前項で触れました。
「田の実」「田の面」が「頼み」「頼もう」に通じることは日本語の融通無礙の特質で、
同音異義は数多いのです。
従ってこれにあやかり、幕府から朝廷へ、諸大名から幕府へ、
家臣から大名へと、権力の強いほうへ「頼み」の贈答が広がっていったのです。
当時幕府の権力がいかに絶大なものであっても、
位階勲等授与の権は朝廷にあったわけです。
誰しも肩書きを望むものです。
心証をよくするために、「どうぞよろしく」と贈り物をしたのです。
幕府はまた、諸大名に対しては活殺与奪の絶対の権を持っていました。
ここにも、贈答の仕来りが生まれたのです。
今の「中元」や「歳暮」にしても、この意が絶無だとは言えないこともありません。