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暮らしと方言の色揚げ内山一兄・郷田敏男 |
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彼岸のイメージは、寒くもなし暑くもない好季節、
弘法さん参り(千人参り)、彼岸だご、
毒々しいばかりの真っ赤な彼岸花が、まず浮かびます。
弘法さんを祭るお堂は、町の辻、袋小路の奧、
往還のわきなど、至る所にあります。
また、はるか離れた山麓や山の中腹の景勝の地にも散在します。
春霞がたなびき、うららな日和で、桜も七分咲きになります。
三三五五、輪袈裟・手っ甲・脚絆・菅笠をかぶり、
お饌米袋を肩に「南無大師遍照金剛」と書いた四角の杖をつき、
鈴を振りふり御詠歌を唱えながら、信者が続きます。
集落の出外れから山麓へと続く野路の両側には、
切れ目なく真っ赤な彼岸花が縁どっています。
春秋二回の彼岸に八十八か所の札所を巡ることを、
「千人参り」と呼んでいます。彼岸のころは行楽日和、
今ならさしずめマイカーで遠出を思い立つのですが・・・。
婆さんたちは、墓掃除や仏具磨きを終えると、
決まって「弘法さん参り」を思い出すのです。