暮らしと方言の色揚げ

内山一兄・郷田敏男

 
 
 
 
 
 
 

弘法さん参り


「私タチノ 学校ンコロハ 千人参リチャ 楽シミジャッタガ・・・」

「ソータノ。学校モヨケ デゾロゾロツンノーテ 参リョッタノヤ」

「米ン三合モ オ饌米袋ニ 入レテノヤ・・・」

「オ接待貰ウトガ 楽シミジャッタモン」。


信者なら身ごしらえにも気を配りますが、

子供たちは仲間同士の自由参加、

長着物の尻をからげてパタパタと往還の土埃を立てながらついて行くのです。


どんな僻地の弘法さんでもお堂があれば、

老女三、四人がお接待に待ち受けています。

回る札所の順や大体の到着時刻は分かっていますから、

お茶をわかし茶菓子を揃えて待っているのです。


着くとまず裾の埃を払い、清流でもあれば口をすすぎ手を洗って、

お堂の前で鈴を振りふり揃って御詠歌を唱えます。

御詠歌をうろ覚えしている子もいますが、

子供の目当てはまずお接待(もてなし)なのです。

お堂の隅かばんこ(縁台)に腰をおろし、

差し出される渋茶で喉をうるおします。

歩きずくめでお茶が旨いのです。

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