暮らしと方言の色揚げ

内山一兄・郷田敏男

 
 
 
 
 
 
 

節分・立春


いよいよ冬から春への入れ替わり、節分から立春へと続きます。

立春・立夏・立秋・立冬と四つの節分がありますが、何故か立春が待ち長いのです。

春を待ちわびる馴染みの詩歌は、望郷の詩歌とともに数多いです。

酷暑に向かう立夏、凋落のきざしの立秋、暗く冷たい暗示の立冬には関心が薄いものです。


昔は日の出から日没までが一日でした。

夜は暗黒で“無”の時間だったのです。

節分の日が暮れれば冬は終わりで、明ければ春です。

冬から春に移るこの“無”の時間に、

人はいろいろな催しをして陰気を払い陽明を待ち受けたものです。

鬼やらいの鬼は陰気な冬の象徴であったでしょうし、

福は待ち受けている開放の春のシンボルであったのでしょう。


旧の二月三日の夜、

夕食は遠に終わってそろそろ夜食でも欲しくなるころ、

「ソッジャ イッチョ 豆撒キナット 始ミューカ」と、灯りを消します。

「ソータイ。灯リバ 消ヤシテ 煎リ豆バ枡ニ入レテナイ・・・」

「奥ン方カラ 座敷 ゴンゼン 寝ドコ 板ノ間。シマエニ 庭ニマデ 撒キョーッタタイ」。

「福は内」と小声で三回唱え、

「鬼は外」と二回ひなおらびをします。


「撒エタ豆バ 踏ンジャデケンテロン 年ノシコ食ブット

マンノ良カテロンデ イロイロヨーラシタナヤ」。


隈なく撒き終わると、また豆を拾い集めます。

お茶請けを食べ、しばらく茶飲み話をすると、子供は寝床に追いやられます。

   

八女方言歳時記へ戻る

 

次項→



ページの上段へ PAGE UP