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暮らしと方言の色揚げ内山一兄・郷田敏男 |
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稲刈が終われば手どりに移ります。腰に古藁ひと手をたばさみます。
それから素早く三、四本を抜き出し、
よりをかけて稲の根元をきびり(結ぶ)、手ごろの束にします。
雨模様にでもなれば取りこみがせわしくなります。
手どった束を集めてむすで(物を束ねるための穂先を結んだ結い藁)できびって丸かす(丸く束ねる)のです。
ぼくと(てんびん棒)でいのうて車の所へ運びます。
車に山積みにしてにの(綱)を掛けます。
若者が車を引けば子供が後押しをして、家の小屋に運び込みます。
何処も稲運びに大わらわで、車力がやっと通れるくらいの農道ではすれちがう場所もないくらいです。
空車のほうが田圃に車を引き込んで離合します。
「ドーモ 迷惑カケタナイ」
「ナンノ。オ互イサマタイ」
「オ前ゲニャ ハカドッツロー」
「ナンノアンタ。ダチャアカン。マーダ半分タイ」。
「百姓ん仕事ぁ 実際、小屋んなけ 取り込うでみにゃ わからん」と言われましたが、
「ホンナコテ コンノーチャ 戦争ンゴタッタナヤ・・・」
ねっぶく(手で編んだ継ぎむしろ)を広げた小屋の中に積み上げた稲束を見て、
「やれやれ」とほっとします。あとは稲を扱いで、
ひやりに(一日中かかって)籾をするだけにこぎつけるのです。