暮らしと方言の色揚げ

内山一兄・郷田敏男

 
 
 
 
 
 
 

麦秋のころ(1)


麦の取り入れのころを麦秋(むぎあき)とも呼びます。

陰暦の五月中旬、新暦で繰ればすでに六月、日は長いです。

かぐわしい新緑にむせかえる好季です。

冬の寒さが厳しかったせいか、麦の生育は順調で、

出穂期・成熟期にひどい雨風もなく満作間違いなしのようです。

そよぐ穂先が白く光り、ひわ色の波が山麓まで続いています。


「今年ャ コリャ満作バイ。冬寒カ時ャ・シャボ寒カラニャン。

雪ハ豊年ノ兆シチューテアルガ ヤッパ 時候ン具合ジャロナイ」

「虫気モナシ ケコーン良カモンナヤ。

ヒワ色シテ屋根替エン萱ニャ モッテコイバイ」

「アンタゲンタ ドーカ。中ナビキデ ユサユサショール」

「ナンノアンタ。ドコントデン 同ジコツ・・・」。

畦道に立ち止まってお互いに相手の作柄をほめちぎります。


裏作の麦の栽培は、ふた昔ごろ前から急に減りはじめました。

休耕したり別の有利な蔬菜などの栽培に切り替わったりしています。

とりわけ裸麦にはほとんどお目にかかれません。

昔は押っしゃぎ飯、牛馬の飼料、自家製の味噌などに需要が多かったのです。

苗代前によく栽培されていました。

小麦は文字どおりこんがり焼けた小麦色、裸麦はやや白っぽいのです。

小麦色と灰白色のまだら模様の穂並みがそよいでいます。

   

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