暮らしと方言の色揚げ

内山一兄・郷田敏男

 
 
 
 
 
 
 

高良さん


昔から一一、三三、五五、七七、九九といった奇数の数字が重複した日は、

節句としてめでたい祝いの日でした。


旧暦の九月九日を「高良さん」と呼んでいます。

重陽・重九の節句に当たります。

すなわち「おくんち」は秋祭りの代名詞にもなり、

収穫を感謝する最も賑やかな祭礼の日であったのです。


旧暦といっても新穀感謝にはまだ早いわけで、

従ってこれに替えて栗を供えたのであろうと思います。

季節にちなんだ時季ものの栗を入れた御飯を供えて、

五穀豊穣・豊年満作を祝ったのです。


「高良サンチュート シャッチ 栗御飯ジャッタタイノヤ」

「アノ アダ皮バハグトン セカラシカッタケン 子供マデ小刀デ アダ皮剥ギ 加勢ショーッタタノ」。


前の晩は夜なべに、子供たちまで栗の皮剥ぎに加勢をします。

ひゆぎんにめいめい栗を分けてもらうのです。

これを火鉢の中の熱灰に埋めて栗焼きを楽しみます。

香ばしい匂、パーンと弾ける栗で、ごんぜんの箱火鉢の周りにひとしきり騒動が起こります。


「栗飯チャ 旨カモンジャッタモンナヤ」

「ソーソー。ママツギバ 掻キマエテ 栗バカリ選ッタクッテナヤ」

「栗バ バカイ合ウテ テンデ 喧嘩ジャン。

何時デンノ オッシャギテロン ヒラカシ飯ノ 倍ダン ハリコーデ 食ヨッタタイ」

 

   

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