暮らしと方言の色揚げ内山一兄・郷田敏男 |
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旧の朔(ついたち)と望(もち)の日は古来とくに重視され、
いろいろの祭事が催されていたことはすでに触れました。
旧暦八月十五日には放生会・千燈明・明月つぁんがやってきます。
放生会とは、金光明経流水長者の故事に基づいて、
捕えられた生類を買い集めて放してやる仏教行事なのです。
仏教では殺生を忌みます。
すなわち殺生は五戒(殺生・偸盗・邪淫・妄語・飲酒)の第一位に数えられ、
今でも仏事には生臭けの食事を避けるのです。
放生会の起源は遠く奈良時代にさかのぼり、
弓矢の守護神宇佐八幡宮で行ったのを嚆矢とします。
当時各地で反乱が起こり、その討伐などでむごい殺戮が繰り返されました。
仏教がようやく浸透してきた時代で、
その弔いをいかがしたものかと宇佐八幡に請うたのです。
「毎年宜しく放生会を奉仕すべし」との神託により、
同社ではじめて放生会を催したとあります。
当時は神仏が自然に融合していわゆる神仏混交の初期で、
「神明は仏法を悦ぶ」とさえ言われたのです。
それが明治の初年に神仏分離の法で厳格に分離され、
仏教の宗旨の放生行事は奇しくも神社側の行事として定着してきたのです。