暮らしと方言の色揚げ

内山一兄・郷田敏男

 
 
 
 
 
 
 

ほっけんぎょ


松の内の掉尾、子供主体のほっけんぎょの行事には、

誰しも忘れ難い思い出を持つものです。


密教には、火渡り・水垢離など荒々しい修行が多いのです。


ほっけんぎょ(法華の行)と言うからには、

法華密教の火渡りの流れをくむ行事と見ていいでしょう。


これが子供主体の行事になりますと危険を慮って、

この焚き火に当たったり、

これで焼いた餅を食べると無病息災で過ごせるという

楽しみの面も加味されてくるようになったのでしょう。


 「モータクゾーイ。モータクゾーイ」、

子供たちの弾んだおらび(叫び)声が聞こえてきます。


外はまだほの暗い。


ようべ(昨夜)は霜夜でした。


案の定、屋根も野道も川ん河原もひどい霜です。


みんな篠竹に小餅を突き刺して走ってきます。


静かに夜のとばりが上がって、

巽(辰巳・東南)の方から白んできます。


頬や鼻・耳たぶを真っ赤にして、

かじかんだ手に息を吹きかけながら待ちます。


そう、頬のことをべんぷ、

鼻・耳のことをはなんす・みみのすと言っておりました。


しびれを切らした子が「モー タコーイ」とあせがり(せきたてる)ます。


「マーダマーダ。ミンナ コラシャッテカラ・・・」と、

頭格がたしなめます。


大人たちもぼちぼち集まってきます。

     

   

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