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暮らしと方言の色揚げ内山一兄・郷田敏男 |
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立春から繰って八八日目、五月二日ごろには「八十八夜」がきます。古来、「八十八」は縁起がよいとされました。
八十八か所霊場巡り、八十八夜、八十八歳の祝い
(米寿)など、幸せにちなんだ行事が多いのです。
「苗代寒合い」(苗代の時季に、
一時急に寒さがぶりかえしてくる気候)という言葉ががあります。
五月初旬で日ざしの強い日は汗ばむほどの天気でも、
夜になると急に冷えて火が恋しいくらいの寒さになります。
曇天の日は特に肌寒さを覚えます。
この寒暖の差が激しい一時季を「のーしろがんえ」と呼び、
苗代仕立ての目安になっています。
八十八夜の日に、苗代に播く籾を水に浸しておきます。
二、三日浸して苗代に播きます。
「苗半作」と言われ、苗代の出来具合によっては収穫が半減することもありますので、
とくに良い日を選ぶのです。
苗代に籾播きが終わると家毎に灯明をあげて、
だご(だんご)と茗荷と蕗を供えて苗の成長を祈ります。
だごは米俵を象徴し、蕗や茗荷は力強い地下茎ではびこるので、
これにあやかって逞しい苗が育つようにとの願いがこめられているわけです。
五月も終わりに近くなり、苗も四、五寸にも伸びると、
畦には誘蛾灯が点されます。
また、小学校では、田の虫の捕蛾採卵が予定に組まれます。
「螟虫」の生態は判かっていてもその駆除法が不明で誘蛾灯をつけて蛾を誘き寄せたり、
小学生が田の虫採りに狩り出されたり、
株切りを強制させられたりしていたころのことです。