暮らしと方言の色揚げ

内山一兄・郷田敏男

 
 
 
 
 
 
 

苗代・誘蛾灯

 

「ホンナコテ 昔ャ 根付ケカラ 穫リ上ゲマデニャ ソーニャ 手ノ要リョッタガナヤ・・・」

「ソータイ。穂ノ出ルゴロ 白穂バカッ 出来テナイヤ」

「ソーソー。チット カンエンヨーナット 小糠虫ノ 寄ッテサイ ボックリサショーッタケン・・・」。


誘蛾灯−それは初夏の農村の夜の風物詩でもあったのです。

トタンで作った円形の浅い水槽に水を張り、

中央に笠とほや(火屋)の付いたランプを吊り下げます。

灯に群がってくる蛾が、受け皿の水に落ち込む仕組みです。

輪番で夕るし方灯を点したり、灯油、そう、せきたんを注ぎ足して回ったりします。

温かい赤黄色の炎が目にすがっています。


捕蛾採卵も一〇日とおかず、二、三回が予定されます。

五年生以上ぐらいの児童が、午後の授業を切り上げて参加するのです。

部落担任の先生が引率して行きます。

子供はめいめい白粉の空き瓶などに紐を付けて腰に下げ、

三尺ばかりの細い篠竹を持ってきます。

篠竹で苗を靡かせて螟虫の卵を見つけるのです。

鱗粉をつけ少し盛り上がった黄土色の卵があります。

葉の表面に蝋を流したような卵を見つけます。

二化、三化螟虫の卵なのです。

←前項  

八女方言歳時記へ戻る

 

次項→



ページの上段へ PAGE UP