暮らしと方言の色揚げ

内山一兄・郷田敏男

 
 
 
 
 
 
 

正月どん


色褪せた年中行事の初手物語を

綴ってみることにします。


「トショット 一年ダン 手間イランバッテ

子供ン時ャ 正月ドンノ コラスタ ソーニャ

待チナンカッタナイヤ」


「ソータイ。コツケゼン貰ウタ正月ト

ヨドン時ダケジャッタモンバ・・・」。


古老の会話には無意識に

「さん」や「どん」(殿)が付きます。


昔は天体・自然現象にも

畏敬した言葉を使っていました。


さらには歳月の里程標のように、

四季おりおりに繰り返される

土俗的な伝承行事さえ敬語で呼んだのです。


「正月どん」「精霊さん」「八朔さん」「七夕さん」と、

必ず「どん(殿)」や「さん(様)」を付けます。


ほとんどの行事が五穀豊穣・無病息災などの

祈願や万物の恵みに感謝する祭りですから、

言葉遣いが温かいのです。


ただ単に行事の到来の意味ではなく、

畏敬するものをお迎えするという響きがあります。


「正月ドンノ コラッシャル」

という会話の件が懐かしいのです。

   

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