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暮らしと方言の色揚げ内山一兄・郷田敏男 |
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八月の初旬、立秋とは名のみでまだ酷暑が続きます。
ですが、盆を過ぎるとさすがに朝晩はぐっと涼しくなります。
「秋来ぬと 目にはさやかに見えぬども 風の音にぞ驚かれぬる」と、
そこはかとない季節の移り変りを歌に託するまでもなく、
じゅぐじゅぐっしょ(つくつくぼうし)が秋を告げてくれます。
もの侘しい初秋の使者つくつくぼうしは、
「つくづく憂し」と鳴くそうです。
そう言えば、細くて赤い精霊さんへんぼ(とんぼ)も決まってこのころ、
稲田の上を群れをなして飛んでいたものです。
このへんぼは精霊さんだから決して採ってはならぬと、
子供のころは強くたしなめられていたことを思い出します。
盆のよけの十七日の夕食後、
坪に出したぼんこの上に茣蓙を広げ、
団扇を使いながら夕涼みのウメさんとトメさんは、
忙しかった盆の話に余念がありません。