暮らしと方言の色揚げ

内山一兄・郷田敏男

 
 
 
 
 
 
 

なごれ十三日


陰暦九月十三日の明月を、「なごれ十三日」と呼びます。

名残惜しい最後の月見と言うほどの意でしょう。

仲秋の明月です。

遠く異郷に在って望郷の心情を歌に託した阿倍仲麻呂ならずとも、

仲秋の満月を眺めては誰しも感懐なしとしないものです。


四季折々に眺める月は、それぞれの風情があるものです。

皚々たる銀世界を照らす冬の月、

菜の花畑を浮かびあがらせる春の朧月、

さなぼりあがりに浴衣がけで団扇をはたきながら、

バンコに腰をおろして眺める田毎の月など、

我が国ならではの風情なのです。


この明月にも芋明月のときと同じく、

畦豆の殻のまま茹でて升に入れ、

月の射し込む縁側に台に載せて供えます。

「豆明月」と言います。

秋の草花を添えたり、

甘くなったさときびなども形を整えて供げるのです。

そして秋の収穫を神に捧げ、

感謝をし喜び合うものです。


「畦豆ハ 枝ン付ィタママ イヂョーッタノヤ」

「ソータノ。ソリバ升ニ入レテ・・・」

「枝グルメ供ゲテ『コゲンビッシリ ナリマシタ』デ オ月サンニ 見スットゲナタイ」

「ソージャロ」

   

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