暮らしと方言の色揚げ

内山一兄・郷田敏男

 
 
 
 
 
 
 

もうぐら打ち


「パーン、パーン」「ポクーン、ポクーン」。

辺りはまだほの暗い。

うす明かりにも霜のひどさがよく分かります。


凛とした朝のしじまを破って、遠く近く、

鋭く鈍く、もうぐら(もぐら)打ちをする音が聞こえてきます。


「モーグラ打チノ 十四日。ネキダレコキダレ ウッ叩ケ」、

地低い爺さんの声とそれを真似る孫のかん高いおらび声(叫び声)が耳に入ります。


何処かで打つ音が聞こえだすとすぐ跳び起きて、負けじとばかり打ちまくります。

よそから叩き出されたもぐらが、わが家の坪先(内庭)にもぐってくるというので、

屋敷じゅうを打ちまくって追い出すわけです。


軒垂れ(軒下)から坪先・せんぜ(前栽)の周りまで隈なく打つのです。


十三日の学校の退けどきか、学校から帰ってから、

川ん土居(どて)に女篠を切りに行きます。


大きくて長いのから、家族の数くらい倒してきます。


すると、待ち構えている爺さんが作ってくれるのです。


小学校も上学年ともなると、見慣れ聞き慣れで自分の手でどうやら物になるようです。


篠のてっぺんに、蒲の穂のように藁を丸めて付けます。


簡単なようですが、ただ藁を丸めてくびるだけでは、

力まかせに叩くときにふっ飛んでしまうのです。


「ソゲンジャン。竹ン枝ニ 葉ノツィータママ

藁ニ巻ッコーデ 確リ

結ットカント スポーット 抜クルモンナヤ」。


くろなりがた(夕方)までに大・小作って、げ(軒さき)に立て掛けておきます。

 

   

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