暮らしと方言の色揚げ

内山一兄・郷田敏男

 
 
 
 
 
 
 

お茶摘み


五月初旬の八十八夜前後は苗代の準備もさることながら、

千日ひして(一日)の多忙な茶摘みがはじまります。


夏も近づく八十八夜、

野にも山にも若葉が茂る。

「あれに見えるは茶摘じゃないか。

あかねだすきに菅の笠。」


と、文部省唱歌「茶摘」の懐かしい歌詞が思い出されます。

見た目には長閑そうでも、息もつけない忙しさです。

裸麦や小麦も日増しに色付きます。

麦秋の前に終わらねばと、

猫の手も借りたいほどの忙しい明け暮れになります。

山村の学校では、この一助にと一週間から一〇日間もお茶摘み休みになります。


子供でも上学年にもなると慣れたもの、

大人に交じって遅れずに摘んでいきます。


「山ツキン子供ダン ソリャー上手ジャン。

大人ト イッチョン変ワランゴツ 摘ンバイ。ヤオナカ」

「ソーソー。バリバリカガル。

古葉テロン固カトコハ 口デスゲテ 除クル。速カコツガ・・・」。

茶畑の少ない家の子は、家の分を摘み終わると、

大作の農家に斤茶摘みに出かけるのです。

毎日摘んだ生葉を計量し、最後に一斤いくらと手間賃を勘定して

ひゆぎん(日雇金)を支払う仕組みになっています。

 

   

八女方言歳時記へ戻る

 

次項→



ページの上段へ PAGE UP