暮らしと方言の色揚げ

内山一兄・郷田敏男

 
 
 
 
 
 
 

お茶摘み


摘んだ生葉は倉の土間や木陰に溜めます。

あまり厚くおくとほめく(むれる)ので、

時折あせくり(かきひろげる)ます。

大釜さんで茶いびりも大車輪です。

茶摘みてぼ(竹で編んだ手かご)一杯くらい大釜さんにぶちこんで、

二股の木で万遍なくかき混ぜます。

混ぜ方が悪いと底のほうが焦げついて変色するのです。

大釜さんの後ろに腰をおろしたおっつあんは兵児一巻で、

一時も手を休めず汗だくだくの大健闘です。

煎れた茶はしょうけ(竹製のざる)にかすくり(かき寄せる)上げ、

木陰に広げ揉み手の筵の上に空けます。


筵の周りに座を占めた揉み手は、まだ手に熱いこのお茶を小分けにして揉みはじめます。

昔の茶は張るだけ張らせて摘んでいたので、力が弱いと細くは縒れません。

「ゴロンゴロン ゴロンゴロン」、

手のひらに包みこんだ葉がむらなく縒れるように、

ほぐしたり丸めたりして揉みあげるのです。

リズミカルで単調な茶揉みには、四方山話が何よりです。

世間話もめごばれ(おしまい)になるころ、やっと夕食に相成ります。


揉み手は、みな茶の渋で真っ黒になります。

揉み方が間に合わねば子供の手さえ借ります。

冷えるとよく縒れないのです。

溜まった生葉の量によっては、夜なべにまで揉むといった多忙な日が続くのです。


揉み終えた茶はよくほぐして日陰で乾燥させます。

後日、ほいろ(焙炉)で仕上げて本製にする所もあります。

いずれも耳の付いた大型の茶瓶に密封して、暗く涼しいところに保存するのです。

梅雨や夏を越した茶は、かえって「飲み」が良いと言われました。

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