暮らしと方言の色揚げ

内山一兄・郷田敏男

 
 
 
 
 
 
 

二月灸


早春の旧の二月二日、「春は名のみの 風の寒さよ・・・」と、

懐かしい早春賦の歌詞が思い出されます。

が、今年は梅ももう七分咲き、霜の朝など陽光がまぶしく、

北風の当たらない障子張りの縁側の日溜まりはぽかぽか、

朝から婆さんは落ちつきません。

老人仲間が寄り集まって灸をすえ合い、

一日を楽しむ「二月えーと」(灸、やいと)の日がやってきたのです。

農閑期の娯楽・慰安・だりやみ(骨休め)の日でもあるわけです。


「ホンナコツ ソゲンタイ。二月エートチューテ スヨッタノヤ」

「ナイナイ。アリャ八月ニモ アリョッツロガ・・・」

「ソーソー。二日ガ 丑ノ日ト重ナット 倍効クチョーッタタノ」。


旧の二月二日と八月二日に老人仲間が寄り集まって、

灸をすえ合いお茶飲み話をしてくつろぐのです。

早摘みの芹のよごしもん(あえ物)が出たりします。


「五体テロン肩ブシノ 一番コワットルトケ 点バ落レテ貰テ ソケ スエテ貰ヨッタタノ」

「ソーソー。昔ン人ハ エートン跡バカッ ジャッタタイ。

特ニ 肩ブシト腰 ソレ膝ボーズンニキガ 多カッタノヤ」。

躰のあちこちに、庖瘡の跡のようなえーとのあばけた(腫れ物などが化膿した)

大きな跡が見える老人が多かったものです。

 

   

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