暮らしと方言の色揚げ

内山一兄・郷田敏男

 
 
 
 
 
 
 

梅雨のころ


旧暦の五月(さつき)の中旬から梅雨に入ります。

二二日間の長しけが終わって、

六月(みなづき)の上旬にやっと生半夏になって梅雨があけます。

青葉の候とは言え、晴れやらぬ陰うつな天気が続きます。

悲喜交々、五風十雨の恵みの雨もあれば、

惨害をもたらす洪水が見舞うこともあります。


夜中から降り出した車軸を流すような豪雨に、

植えたばかりの田の苗を気遣ってまんじりともしないのです。

なかには思い切れずに蓑を着け、

提灯をとぼして田の見回りをする人もあります。

溝にあふれた濁流は畦越しに田圃に流れ込み、

苗の葉先も見えぬほど冠水してしまいます。

入り水口(水田の水の取り入れ口)のさぶた(かんがい用水の水門)を締め、

落て水口〈水田の水の落ち口)を切り開いたりして、

八面六臂の働きをします。


「植エタハナ モノン二時間モ ダダ降リスンナラ

田ン中ハ ザマナカゴツ ナンナヤ」

「ソータイ。水ノ減ッテカラ 流レ込ウダ泥バ

カスクッ出エタリ 苗ン刺シ継ギシタッデ ナイ」。

 

   

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