暮らしと方言の色揚げ

内山一兄・郷田敏男

 
 
 
 
 
 
 

梅雨のころ


大川も茶褐色の濁流がみるみる嵩を増します。

田圃も家にも心配のない人たちは、

早速にごりすき(濁流にさでやざるで魚をすくいとること)と

あずひれ(川に流れる木ぎれなどをひろうこと)に集まってきます。

「にごりすき」とは大水のときの魚掬いであり、

「あずひれ」は流木拾いのことです。

長じょうけやさで(叉手)・たご(おけ)を持って、気負い立ってやってきます。

小魚は奔流を避けて淀みに群がっているものです。

そこを目の細いさでで掬いあげると、

銀鱗をきらめかしてごっそり入るのです。

片やあずひれは、長い竿になた鎌(厚刃のかま)を

結いつけて流れるあずを引き寄せて揚げるのです。


「今ダン 古材ャ コソーット 大水ン時抛ン流スバッテ 初手ハ アズチャ 良カ焚キ物ジャッタナヤ」。

拾い集めたあずは日ざしのあるときに坪先で干しあげて、

ねきだれ(軒下)にこづみ上げておくのです。

これが、くどや五右衛門風呂の貴重な燃料になっていたのです。


「トコロガ 旧ノ六月朔日ジャッタカナイ。

氷餅チューテ 荒神サンノ重ネ餅バ 焼エテ食ビョーッタツァ?」

「ソータイ。餅ニ 生小豆 ニンニクドン 混ゼテナイ」

「香バシ節句テロデ 香バシモ 掬ヨッツロガ・・・」。

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