暮らしと方言の色揚げ

内山一兄・郷田敏男

 
 
 
 
 
 
 

梅雨のころ


正月の七日のほんげんぎょで焼いた荒神さんのお供えを焼き直して、

小豆三粒ににんにくを添えて食するのです。

また、こうばしをひいて神仏さんに供げて、これを掬います。

いずれも「厄散らし」の呪いとか。

そう言えば、旧暦六月朔日にはいろいろの行事が多かったのです。

男女数えの七歳になれば、

この日に兵児・湯文字祝いを行って子供の健やかな成長を

祈ったものです六十一歳では「賀の祝い」をして、

爺さん婆さんに赤襦袢と赤つんのき(ちゃんちゃんこ)を贈って高良山参りをして長寿を祈ります。

梅雨に入って間もないころの旧六月朔日には、

奇妙にいろいろの行事が重なったものです。


梅雨のあがり、新暦で言えば七月二日ごろ、

やっと半夏になります。

はげの日には生水を飲むと頭が禿げると言って、

くどくたしなめられていたことを思い出します。


地膚の温もりに敏感な蝉は間違いなく姿を見せます。

梅雨の晴れ間を縫って殻を抜き、

青葉の柿や櫨の梢で季節の声を撒き散らすのです。

梅雨のあがり、ほっとします。

いよいよ子供天国の本格的な夏を迎えるのです。

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