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暮らしと方言の色揚げ内山一兄・郷田敏男 |
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お観音さんの信仰は、全国津々浦々にまで浸透しています。
とくに、農村村では信仰が根強いのです。
すでに触れましたように、女の信仰心仲間のお観音講が隣組単位で組織されて、
毎月十七日の夜にはその催しが家毎に回ってきます。
梅雨のあがりの旧暦六月十七日の早朝には、朝観音さんが開帳されます。
師走の十七日にも催されますが、これは寒さの加減か影が薄いのです。
六道の衆生、すなわち地獄道・餓鬼道・畜生道・阿修羅道
・人間道・天道の衆生を済度すると言う観音菩薩ですから霊験あらたか、
老若男女に信仰が篤いのです。
十七日の早暁と言うより夜半過ぎると、
もう遠方からは草鞋がけて提灯を点して信者が出発します。
三三五五うち連れて夜道を急ぎます。
山門の前には参拝者目あての夜店が並んでいます。
飴形やおこしなどの店が多いのです。
お堂は、地元の信者の奉仕で清掃されています。
お堂のほとりの渓谷では蛍が飛び交い、
そよ風が心地よいものです。
揃ってお堂の前で御詠歌を唱えます。
終わると備えてある茣蓙敷のばんこ(縁台)
に腰をおろして渋茶とお茶請けの接待を受けます。
仏前のおひかりと大提灯の炎でうす明るいのです。
「朝観音サンチャ 気色ノヨカモン ジャッタノヤ−」
「ソ−タノ。長ウ参ランガ 今デン アリョッジャロカ?」
「今ハ 参ル者ナ アルメモン」。
このごろは「参ッテ 何ナロカ」と、信仰も打算抜きでは
考えられないような荒廃した世相になってきたようです。