暮らしと方言の色揚げ

内山一兄・郷田敏男

 
 
 
 
 
 
 

さなぼり1


戦場のように忙しかった数日の田植えが過ぎます。

すっかり薄緑に模様替えをした田面を風がそよぎます。

時々よかうり(結構な湿り)がするので、水はたっぷりです。

模様替わりに戸惑った蛙が、時折思い出したように一斉に合唱を繰り返します。

田植えがすんだら、しばらくは水加減が大事なのです。

日に何度も田圃を見て回り、水の調整をしたり、苗の刺し継ぎなどをします。

梅雨でも日ざしがあれば、合間にしょろ綱を竿にさげて乾かし、

鋤・鍬などを洗って干しておきます。


「ソーナイ。田植ン 仕舞ユット 残ンノ苗カラ 良カトコバ選ッテ

溝デ ヨーット洗テ ウチン荒神サンニ 三括り 供ギョーッタガナヤ・・・」。

稲の生育を祈って三柱大荒神に早苗を捧げるのです。

くどに供えた苗は枯れると、これを仏具磨きに使っていたことを思い出します。


村の最も水下の田ん中まで総ての田植えが終わりますと、

区長さんは総代を通じて「アシテカラ五日間 サナボリヨケニスル」

と布令を回します。

お待ち兼ねのよけです。

   

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