暮らしと方言の色揚げ

内山一兄・郷田敏男

 
 
 
 
 
 
 

もうぐら打ち


「パーン、パーン」と地面の固い坪か、大人の男が叩く音。


「ポクーン、ポクーン」と柔らかい畑の周りか、子供が叩く音。

ひとしきり、賑やかな音が村じゅうに響き渡るのです。


 昔からもぐらは田畑の大敵、田の畦をもぐっては水をもらし、整地した畑を盛り上げるのです。


「もぐらもち 時どき上に 踏みはずし」と川柳にもありますように、

地中にもぐってなかなか姿を見せません。


畑にトンネルを掘っては植えたばかりの苗をしおれさせるのです。


「今ハ 昔ンゴツ モーグラン メッカランゴタンナヤ」

「ソーッサイ。昔ャ 田ン中デン畑デン 土肥

厩ン肥バカッ 使ヨッタケン ソケ ミミズノゾロゾロジャッツロガ・・・」

「ソーナイ。今ハ ミミズモ シカツ オランゴツナッタケンナイ」。


「桃栗三年 柿八年 梅はすいすい十三年」。

屋敷の周りに梅や柿の二、三本は自給のために植えておくのが、

農家の常道でした。これらの木の枝に、

打ち終わったもぐら打ちを折って掛けておくと早く実るとか。


せどえ(家と家との間の狭い空地)の柿の若木に、

もぐら打ちを折り掛けてあるのがあちこちに見られたものです。

 

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