暮らしと方言の色揚げ

内山一兄・郷田敏男

 
 
 
 
 
 
 

ほっけんぎょ


正月も三日となると、

子供たちはそろそろほっけんぎょの準備にかかるのです。


学校にあがっている子は講中で二〇名近くいます。

一年が新入りで、高等二年が頭になります。

子供の社会は縦社会なのです。

頭が仕事の分担を決めます。


「一・二年ナ 縄カ ムスデ(物を束ねるために穂先を結んだ結いわら)バ

持ッテケー。三年カラ六年マデハ 鎌テロン鉈・竹切ッ鋸デンヨカ。

高等科ハ 車力ト ニノ(荷綱)バ カッテコニャン」。


専決ですが、その能力を見抜いての妥当な命令です。


村はずれの川の土居の竹切りと、村山に登って芯木の松の木を切りに行きます。

山麓でふた手に分かれます。

上級生が竹を切り松の木を倒し、

中学生がそれをきびって(括って)車力の所へ運ぶのです。

低学年は、綱をつけて車のはな引き(牛馬の手綱をとって引きまわすこと)か後押しをします。

桃太郎の鬼が島征伐のときの宝運びよろしく、

「エンヤラヤ、エンヤラヤ」と。


古老は、思い出話に目を細めるのです。

「ホンゲンギョーチャ 楽シミナモンジャッタナヤ」


「ソータイ。寒カサカリ イッソ揃テ 車力デ 竹切リ行キョッタタイ」


「昔ャ 足袋クサ 履キョーッタバッテ テヌキノゴタッタ ナカッタケン

ヒビ アカガリ シモバレデ 手足ャ

ササラカ(肌から脂気が抜けて、ばさばさしているさま)ッタナヤ。

ソレ コゲナ仕事バ ハリコーデスルモンバ 生傷ァ 絶エジャッタタイ」


「ソーコタ。バッテ 怪我シタッチャ

フツドン オシモーデ ソケツケテ 上カラ

葛デキビットクト テーゲ ヨーナリョッタガ・・・」。

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