暮らしと方言の色揚げ

内山一兄・郷田敏男

 
 
 
 
 
 
 

田植え点描


梅雨のはしりの小雨の天気、

牛馬を使って代掻きがはじまります。

久しぶりに外に出た馬は勇み立って、

パシャパシャと前肢で泥水を蹴立てます。

トッポントッポンと牛歩漫々、

歩みののろい牛が涎を垂らしてまが

(馬に引かせて水田をならす農具)を引きます。

「サシサシ」「マイマイ」と、

蓑を着けたおっつぁんが方向を指示します。

まがを引かせて巧みに水田をならしていくのです。


代掻きは、荒代・中代・上代と入念に繰り返します。

これがまずいと、しょうけ田(水持ちの悪いたんぼ)

は水持ちが悪いのです。

最後の上代が終わると、片そばからしょろ綱(しゅろ綱)

を張り、苗を配って田植えをはじめます。


先頭から少しずつ遅れて、

前後左右一直線になるように後すざり(後退り)をして植えていきます。

「チーットズツ 遅レテ 植エテイクバッテ 誰デン

右下ガリ植ユルケンデ 横ゾカラ見ットヨゴヨゴナッテ シモータイ」

「ソータノ。慣レント 足捌キノ悪ウシテ

自分ノ足跡ニバカリ植エニャンゴツ ナルモンノヤ・・・」。

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