暮らしと方言の色揚げ

内山一兄・郷田敏男

 
 
 
 
 
 
 

田植え点描


世間話は続けても、手捌きは鈍りません。

手が揃っていれば、見る間に一枚が青田に変わります。

代掻きは疾うに終わっています。息つくひまもありません。

「アー コワッタコワッタ」と、腰をトントン叩きながら下の田に移ります。

単調で日なが一日の手仕事、世間話の種が尽きると、

のど自慢の田植歌が聞かれることもあります。

「ハァー 腰の痛さよ せまちの長さ 四月五月の 日の長さよー ハー サンバイ サンバイ」。

一枚終わる毎に、楽しみのさなぼり(田植えの終了の祝い)が近づいてくるのです。


日傭取り(ヒユトリ−、一日いくらで雇われる者)−昭和の初期までは、

田植えの遅い平坦部の婦女子が団体で日傭取りに上ってきていました。

紺絣の短い着物に赤湯文字をちらつかせて、

風呂敷包みと雨がさの出で立ちで、泊り込みの田植えなのです。

上から下方へと、二週間も移って回るのです。

ほのぽのとした田植え点景でありました。

 

←前項  

八女方言歳時記へ戻る

 

 



ページの上段へ PAGE UP