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暮らしと方言の色揚げ内山一兄・郷田敏男 |
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割り木(薪)のようにかちかちに干しあげた棒鱈を溝に浸けて小一日ほとばかし(ふやかす)ます。
引き上げて、藁打ち槌をふるって石の上で気長にたたきます。
手間がいるのです。
手間がかかり、手づくりですから、かえって旨いのかも知れません。
「ホンナコッジャン。棒鱈ナラヨカウッデ テ−ゲ 鱈ンオサジャッタタイ(鱈のえらを干したもの)
アリャ 何チョ−ッツロカ?鱈ン腸バ 乾シ上ゲタツモ アッツロガ・・・」
「ウ−ン。ソゲントンアッタ。カ−ロ色ツケテナイ・・・」。
鎮守の杜の境内では、くろなり方から遊楽の祭文が催されます。
少々早じめ(いつもより早く仕事を終わること)をして、
浴衣がけで団扇片手によどに出るのです。夜店が参道にずらりと並んでいます。
近郷からのお客も目につき、威勢のいい酔客も目につきます。
広場に簡単な幕を張り巡らし、にわか仕立ての演台に掛けた刺繍入りの
華やかなテ−ブル掛けが、やけに目だちます。
敷いた茣蓙に腰をおろして、やぶ蚊をパタパタ団扇で防ぎながら熱演に聞き入ります。
田舎回りの祭文にはありふれた外題が多いものです。
祭文語りがさわりになると、扇子で口元を隠して、ゴクリと水をふくんで声色を変えます。
合い間を見て主催者が、
「トザイ ト−ザイ。マ−タマタ一封花ノ御礼 申シ上ゲマ−ス」と、
ひなおらび(絶叫)をしてお包みの披露をしたものです。
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