暮らしと方言の色揚げ

内山一兄・郷田敏男

 
 
 
 
 
 
 

春の七草


事のついでに、野草の薬効のページを繰ってみることにしましょう。

薬という字は「草を楽しむ」と書きます。

文字どおり野草の多くは薬になるのです。


すずなは「目の病に卓効あり。また痛み痺れの痺病をとり除き、

久しく服用すれば身の動きが軽くなり、

老人になっても老いさらばえない」(意釈神農本草経)

と、その卓効が称えられています。


はこべは「悪瘡に神効があり乳汁を下す。産婦よく食うべし」(本草拾遺)

と、催乳作用があることが述べられています。


ごぎょうも「空咳・去痰・止咳薬として用う」(本草木)とあります。


外は省きますが、いずれも卓効・神効がありますので、

これを食べぬ手はありませぬ。


生活の知恵で、先人たちは食生活にも気を配っていたことが窺われるのです。

正月も半ばの十四日には、「だんだら粥」と「ほだれ菜」が待っています。


「ホダレナチャ オドンガ 小若者ノ時マデハ

婆サンノ ショーラシタガ・・・」


「ソータイ。忘レッシマヨッタ。

コーマカ蕪バ 根ノ付イタママ 朝ン

味噌ンオツケニ入レテ ソリバ オ椀ノフチ

載セテ 何回カ 回エテ 食ビョーッタナヤ」


「ソータイ。何カノ 呪ネジャロガ・・・」


「二十日ニャ ドンドラガイモ ショーッタナヤ」


「ソージャッタ。小豆飯ニ 餅ノ小屑バ入レテナイ。

アリャ ネバネバシテ 旨カッタモンナヤ」。


“だらだら粥”とも言いました。


 いろいろの行事も謂れ因縁があるものです。

ですが、草殺し、殺虫剤を撒きちらす昨今の田の畦では春の野草も摘めないし、

七草の行事もまた消えていくのが心残りです。

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