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暮らしと方言の色揚げ内山一兄・郷田敏男 |
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精霊さんにはだごのように、社日つぁんにはぼた餅がつきものでした。
これと相前後して、家毎に「庭祭り」を催します。
秋の穫り入れのときに坪(内庭)に筵を広げて仕事をしますが、
そのときにこぽれた籾を丹念に掃き集めてとっておきます。
そして春先のこの庭祭りに、
これでおはぎを作って庭の神に供えるのです(後には拾い籾の慣習は消える)。
「アタイダン ヒレ籾バ スリヘーデ ボタ餅作ッテロンナ 知ラジャッタ」
「ソータイ。オドンモ知ランケ・・・。バッテ 籾一粒デン 勿体ナカ
粗末ニャシチャデケン チューコツジャロモンバッサイ」。
ついでに付き合いや近辺の者を呼んで、飲み食いの小宴が開かれるのです。
元来、庭という言葉はいろいろの場所に使われました。
まず、家屋の中の土間を指します。
昔の土間は広くて、釜屋と土間で建坪の半ばを占めたものです。
農器具の収納場にしたり、雨のときの作業場に代わったりしたものです。
次には、家の前の広場を言います。
これも、坪とか庭とも呼びます。
ねっぶく(手で編んだ継ぎむしろ)を広げて穀類を干し、
その調製作業をする場なのです。
所によっては、屋敷内の一隅に家の神を祭り、
その周りを庭とも言いました。してみると、
同じ庭がこのようにいろいろの場所を指すことは、
農業が神と密接に結び付いていることを意味していることが分かります。
そして、その祭りは自然即神への感謝の表明であるとみてよいと思います。
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