暮らしと方言の色揚げ

内山一兄・郷田敏男

 
 
 
 
 
 
 

二十日正月など


昔の魚類の保存法は、塩をまぶすか、

かちかちに干しあげるかでした。


塩鰯・がんつけ(蟹づけ)・漬けあみや棒鱈・

するめ・きびなご(だしにする小魚の干し物)などは、この例なのです。

鮮魚のことを「ぶえん(無塩)」と呼んだものです。


これは文字どおり塩をまぶしていない魚のことで、

海から遠い山村僻地ではめったに口にされなかったのです。


はぐり暦が旧の二月になります。

旧の二月一日を「たろが朔日」と言います。

「次郎が朔日」「二月年」「一日朔日」とも、いろいろに呼んでいます。

男の四十一歳、女の三十三歳は、古来厄年とされています。

「年とり直し」といって、この「一日正月」を祝って年を一つ増やし、

早く厄年を逃れようとするのです。


厄年の人がいる家では、何が何でもこの日までは正月の餅をとっておくのです。

縁起をかつぐ家では、この日にはまた新たに餅の一臼も搗いて祝ったりしたものです。

 

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