暮らしと方言の色揚げ

内山一兄・郷田敏男

 
 
 
 
 
 
 

初丑・初午


「下リ丑ガ二月ノ初丑デ 上リ丑ガ 十月ノ初丑ジャッタタイ」

「ソーソー。麦蒔バ 仕舞ワカスト 牛ドンナ 冬ハ 山ンナケ 帰ルゲナテロデ・・・。

冬 山サン 焚キ物ドン取リイク時ャ『ソゲン山ン中ジャ オロジャデケン。

牛ドンノ タマガラス』デ言ワリョーッタタイ」。

下リ丑のときはなるべく早く来るようにと、

早朝からきな粉ぼたもちなどを並べて牛が山から降りてくるのを待ちます。

上り丑のときは、夕方また餅やおはぎなどをして労をねぎらい土産を持たせて送り出します。

「今ハ 牛馬チャメッテ見ランバッテ 昔ャ エゴツネ飼ウテ トテモ ムゾガリョッタケンナヤ」

「ソータイ。牛モ 田ノ神サント 同ジジャッツロダイ」

「アノ黒木ン丑ノ宮ン境内ニ 太カ牛ノ 据ワットッツロガ・・・」

「アイアイ。ソーソ、オドンガコマカ時ャ アリバ 撫デサスリショーッタケ・・・」。

そう言えば、黒木町の津江神社は、

正式の名を呼ぶより「丑の宮」と言う方が通りがよかったようです。


古来、牛も馬も家族の一員として労られていました。

謂わばこの祭りは、牛や馬にことよせた農耕の神への感謝の意の表明であろうと思います。

←前項  

八女方言歳時記へ戻る

 

次項→



ページの上段へ PAGE UP