暮らしと方言の色揚げ

内山一兄・郷田敏男

 
 
 
 
 
 
 

香ばし権現さん


山つきの農家では、晩秋に串の柿を作るために、

やうち(家族)揃ってよなべに小柿の皮をむくのです。

その皮でさえ捨てないで、筵に干して保存します。

これを後日はたって(粉にして)、

百本漬けの味付けに入れたり、

コーバシにひいたりします。

干し上げた柿の皮は少々甘味が出るので、

この香ばしは砂糖勘定になるのです。

「ソータイ。柿ノ皮コーバシャ 砂糖入レンデン 甘味ンアッタモンナヤ」

「ソリバッテ 麦ンコーバシノ方ガ ナンチュータッチャ カバシカッタバイ」。


ひき終わると、黒砂糖を砕いて万遍なく混ぜます。

それを小盆に分けてまず権現さんに供えるのです。

それから神棚さん、仏さんにしばの葉を添えて供げます。

めんめんどん(めいめいたち)がありつくのはそれからです。


「バッテ コリバ 速ヨ食ブット 唾ン足ランゴツ ナリョッタナヤ」

「ソータイ。アンマリ食ブット 尻ノ詰マルチューテ ガラリョーッタタイ」。

香ばしを口に含んでは話が出来ません。

人の悪口を言わぬように、香ばしを食うとも言われたものです。

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