暮らしと方言の色揚げ

内山一兄・郷田敏男

 
 
 
 
 
 
 

香ばし権現さん


香ばしが出来上がると、昼からのお茶のころ、隣近辺に布れて回ります。

「コーバシノ デケタケン オ茶飲ミ キナサランノー」

「ソンナ イッチョ ジキナシ 呼バレニ来マッシュカ」。

年寄りが集まって、ひとしきり四方山話が弾むのです。


香ばしと権現さんは、どう言う所縁があるか分かりません。

どだい、権現様は菩薩が衆生を済度するために、いろいろの物に化身したものだそうです。

東照大権現などと、菩薩に擬した神様の名さえ付いています。

昔の神仏混交の名残りなのでしょう。

そう、まず権現さんに供えて、神仏のお加護に感謝するのが定めだったのです。

「今デン アタイダン 何カ作ッタリ 貰タリスット 一番サキ 神仏サンニ 供グルバイ」

「ソーッサイ。ソゲンセニャンドコジャ ナカ」。


 老人の心には、今でも天地の恵み・神仏の加護が根づいているのです。

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