暮らしと方言の色揚げ

内山一兄・郷田敏男

 
 
 
 
 
 
 

彼岸


「アタイダン 中日チヤ オ寺詣リガ シゴッジャッタガ・・・。オハチ袋ニ米ドン入レテナイ」

「アリャ オトキチョーッタカナイ?オ寺の昼飯・・・」

「ウン。オトキ オトキタイ」

「オトキドン ヨバレテナイ」。

衆生の願望は「現世安穏、後生善処」と、昔も今も変わりはありません。

こうして、彼岸会が弾んでいたのです。


 お寺やお宮には心ず籠り堂があります。

籠り堂とは、社寺で行者または信者が参籠するお堂のことです。

中日には、年寄りは茶塩気(オチャのときにとる塩気のある食べ物)

持ち寄りでお籠りにやってきます。

参籠者は読経をしたり御詠歌を流したりして過ごします。

終わると和楽の会合になるのです。

持ち寄り茶塩気をつまじり(箸をつけてつつく)ながら、

和楽の一刻を過ごすのです。


休日ですから、子供も参加の「千人参り」のことは別に触れておきました。

こうして、すべてが何等かの形で祭事に参加していたのです。


 「彼岸花ナイ。アリャ 色ン ゲサッカモンナヤ。

彼岸ゴロジャ アキ桜。コスモスチューカイナ。

アリャ今 ドコデン ソーニャ ハヤリョールバイ」。

間違いなく彼岸に合わせて開く、

どぎつい濃赤色の彼岸花はイメージが悪いようです。

穂並みの揃った田の畦を赤く隈どります。

墓地の周りにも群生するので、「死に花」「幽霊花」とも言われます。

地下茎は漢方薬にもなりますが、茎は有毒で「毒花」とも呼ばれています。

色といい、咲く場所といい、有毒といい、何と分が悪い花でしょうか。

しかし、文字どおり彼岸到来の予知花として印象が強いのです。

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