暮らしと方言の色揚げ

内山一兄・郷田敏男

 
 
 
 
 
 
 

雛祭り


「今ンタ 賑ヨートルモンナイ。ドーカ

一番上ン宮殿ダン エライ念ノイットルガ・・・」

「五段モン 七段モンマデアッテナヤ。

御所車テロン ボンボリ オ膳カラオ椀マデ ツンノートルガ・・・」。

すでに記憶も定かでなく、今の雛壇と比べる術もありませぬ。


和紙を桜花型に切り抜いて張り付けた花傘をつけたものです。

その中に、大から小へと模様鮮やかな毬を下げて、雛壇の両端を飾るのです。

とにかくひいなさん以外はすべて手づくりなのです。

手づくり−これは孫の節句を祝ってやる婆さんの何よりの贈り物であり、

また冬の夜長のよなべの楽しみでもありました。

「ソーデスノー。両方デ 手毬ャ 十グレフトコモ サゲマスモンバ・・・。

太カツァ 七色グレ 糸バ変エテ 仕上ゲマスケン 日数モ カカリョリマシタ」

「正月過ギット 直グ取リ掛カリョリマシタバノ」。


 ひまひまに手毬を編み、ふつを摘み、

白酒を仕込みます。子供の健やかな成長を祝う行事には丹精がこもったものです。

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