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暮らしと方言の色揚げ内山一兄・郷田敏男 |
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学校に行っても勉強の段ではないのです。ときどきはるかに聞こえる打ち上げに、
そわそわで勉強もうわの空なのです。
「水天宮テロン 八朔サンニダン 学校ハ 昼前ニセラスト ヨカガデ ソーニャ 思ヨッタガナヤ」
「日曜テロン 夏休ミニアット 朝カラヨサリマデ 何遍デン 参ッテヨカモンバナイ・・・」。
よど(祭典のにぎわい)は旧暦、学校は新暦ですから、
よどの日が平日になったり日曜にあったりします。
また、夏休みの八月にあったり九月になったりして月がずれるのです。
ですが、この日ばかりは宙を飛び、学校が退けると一目散に雑嚢を押えて息せき切って帰ってくるのです。
水天宮の本宮は久留米の瀬の下にあり、
安徳天皇他三体が祭神です。
幼帝の入水にちなんで、水難除けと安産の信仰が篤いのです。
後には、川沿いの各地に分霊されました。
ここ祈祷院の水天宮の境内には、大正十年の大洪水の惨害に鑑み、
翌十一年四月に分霊を受けるとの碑文が在ります。
子供たちは、そろそろ水遊びが恋しくなります。
古来河童封じに霊験あらたかな水神ですから、
詣って独特の五字の梵字がついたお札を受けるのです。
これを千切って服用するか、細い竹の管に入れて頸に下げていれば、
水難を逃れると言われています。水難の加持祈祷をするこの日が過ぎると、
水あぶり(水浴)もよしとされたものです。
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