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暮らしと方言の色揚げ内山一兄・郷田敏男 |
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お宮の下の河川敷にずらりと露店が並びます。
ありとあらゆる店が顔を揃えます。
アセチレン灯の匂に、焼きするめ・回転焼きなど、
いろいろの匂が混じったよど独特の匂が漂います。
ねじ鉢巻きをしたおっつあん(おじさん)のだみ声を、
前垂れのおばさんがかん高いひなおらび(絶叫)で混ぜ返します。
風船のついた笛の音、おもちゃのラッパの響き、
氷水屋が振るリンの音が間奏をかなでます。
この物音やざわめきが、よど独特の賑やかな雰囲気を醸し出すのです。
宵の口で、子供連れの参拝者が最も多い時刻です。
玉砂利を踏んで社前にぬかずくと、ひっきりなしに鈴が鳴り、
賽銭が飛んできます。
回って社務所で、厄除けのお札を受けるのです。
子供は水難除けや安産のお願いよりは夜店のほうに気をとられ、
しきりに母の袖を引っ張ります。
「ホンナコテ 子供ン時ャ オ宮参ッデナシ店参リジャッタケナヤ」
「ドリ見タッチャ 欲シカ物バカッデ 店ン側バ 離レキラジャッタタイ」
「飴ン湯モ 飲モゴタル 遊ンモンモ 買ウテ貰オーゴタッデナイ」
「安カ ニッケ酒テロン 手写シドン 買ウテ貰テ・・・」。
いろいろの見せ物がきます。
よく田舎巡業の芝居の舞台がかかったものです。
お宮の籠り堂を興業主が控え所に借り、諸肌脱いだ役者が化粧をします。
首まで真っ白に白粉をぬたくった女形が、
芝居小屋の裏口から出入りするのを飽かず眺めたものです。
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