暮らしと方言の色揚げ

内山一兄・郷田敏男

 
 
 
 
 
 
 

端午の節句


「男ン節句ニャ 幟ト粽 ソレニ 菖蒲酒ガ ツキモンデナヤ」

「幟ノ絵ガ 勇マシカ侍バカッジャッタタイ」。

そう、宇治川の先陣争い、川中島の合戦、扇の的、加藤清正の虎退治など、

人口に膾炙された武将の絵の幟が坪先にずらりと並びます。

布や紙でしつらえた鯉幟が泳ぎます。

たいてい嫁の里や近親者から贈られたものなのです。


「子供ニ 菖蒲酒ドン ネブラセテナヤ・・・」

「ホンナコツ。万病ン薬テロデ・・・。トコロガ 粽チャ メッテ見ランガ 今デン アッジャロカ」

「アルバイ。自分デ 作リャ 出来ルメバッテ 店ン頼ムト 作ッテクレラスバイ」。


数日前に、餅米とうるちを半々ぐらいに混ぜて水に漬けてほとばかす(ふやかす)のです。

一昼夜ぐらいで三角じょうけ(三角形をした竹製のざる)にあけて水を切ります。

これを石臼で舟念にはたる(粉にする)のです。

前日が忙しい粽作りで、いろいろの材料が要ります。

笹のてっぺんの二つの広い新葉、

いいがら(藺殻)かしょろ(棕梠)の葉、菰、口なしの汁を揃えるのです。

はたり粉をこねて三味線のばち型にして、その両面に口なしの汁を塗ります。

これを笹の新葉にはさみさらに菰で衣を着せて、いいがらでぐるぐる巻きます。

菰の葉先は切らないで直角に曲げて格好をつけるのです。

五個ずつ振り分けにしてしっかり小繩できびり(結ぶ)、

菰の根元を切り揃えます。一〇個で半掛け、二〇個で一掛けになるのです。

これを大釜さんに吊りさげて茹でます。

茹だった片そばから日陰に吊して乾かすのです。

 

←前項  

八女方言歳時記へ戻る

 

次項→



ページの上段へ PAGE UP