暮らしと方言の色揚げ

内山一兄・郷田敏男

 
 
 
 
 
 
 

麦秋のころ(1)


裸ごんのは穂先を千歯(千把)でこいで、日盛りに臼で搗きます。

ばっちょ笠(竹皮笠)をかぶり、

かんかん日照りの坪先に筵を広げ、

ひねもす裸搗きの苦労が思い出されます。

これを唐箕で繰って仕上げをするのです。

裸ごんのはとくにはしかいものです。

子供たちは「ハシカカケン 来チャデケン」と、日陰に追いやられます。

麦殻の茎の袴を除いて、日陰でもっぱら螢かご編みに熱中します。

麦稈をつなぎながら、手習いで螺旋状の螢かごを丹念に編むのです。


遅い夕食後、螢草(づばなのほうけた穂)や

箒草を竿の先に結いつけて、川の畔を走り回ります。

「ンパ ンパ」と唇を鳴し、

「ホーホー ホータルケー アッチノミーズァー ニーガイゾ

コッチノ ミーズァー アーマイゾー ヒッシャクモッケー タゴモッケー」。


捕ってきた螢には口に水を含んで「ブーッ」と霧吹きをして、

げの暗すみに下げておくのです。

語り続ける古老は、子供になって目を細めます。

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