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暮らしと方言の色揚げ内山一兄・郷田敏男 |
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運びこんでこづみ(積み)上げている麦の山を、
ひと手ずつ交互に組んで穂先を陽に当てます。
空いている所には、足の踏み場もないほど並べます。
屋敷が狭い家では、往還の両側にまで並べて干すのです。
かたわら、坪先の片隅に麦打ちのぶて(無台)掛けをします。
麦粒が飛び散らぬようにコの字型に三方を筵・茣蓙で囲い、中央に叩き台を据えます。
台の上に厚い板か平たい石を並べるのです。
これが叩き台になるわけです。
最も日ざしの強い午後から、麦打ち作業にかかります。
手どった(刈り倒した稲麦などを束ねた)麦の束を力一杯この台に叩きつけます。
「バシッ」と叩くと、からからに乾いて今にも実がこぼれそうな穂先の実は、「ゾクッ」と落ちるのです。
裏表と四、五回も叩くとほとんど落ちてしまいます。
軽くなった麦殻はポンと後ろのほうへ投げます。
乾している麦をかためて運ぶ者、叩く者、
落とした麦殻を束ねて片付ける者と、分業で仕事をさばきます。
みるみる乾している麦が減っていき、
こづみ上げる麦殻が高くなります。
「麦打ッチャ ノサジャッタナヤ」
「ソータイ。アノ暑カ盛リ カンカン照ンノ時 打タニャンケ 術ナカッタタイ」
「暑カ盛ッデナカラニャ ムゴ落テンモンバ・・・」
「ゴミウチカブッテナイ 鼻ンスン中マデ 真ッ黒ウ ナリョッツロガ・・・」。
ふう包みはしていますが、顔から首、眉毛、まつ毛まで埃が付いて、
しろこ(白粉)をふいたようになるのです。
流れる汗で顔面は縞模様、耳や鼻の中まで黒くなるのです。
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