暮らしと方言の色揚げ

内山一兄・郷田敏男

 
 
 
 
 
 
 

麦秋のころ(2)


落とした麦を籾通しでふるい、さらに唐箕で繰って選別をします。

軽くて扇ぎ出された麦殻の屑をぼさと呼びます。


ちなみに、気がきかずにぼんやりしている人を「ぼさ」と言い、

そのようにしている状態を「ぼさーっとしとる」と言います。


一段落すると、そのぼさをだめご(紐をつけて担うようにした竹製の大きな容れもの)

に詰めて田ん中に運ぶのです。そして風が凪いだ夕るし方、

あちこちに積み上げたぼさに火を付けます。

やれやれ、「ヨーヨ シマエタ」。

「戦すんで日が暮れて・・・」

(「戦友」)の感慨にひたりながら、しばしぼさの火を見つめるのです。

晩春の夕方、田毎に立ちのぼる薄いぼさ焼きの煙は、

麦ごんのあがりの農村の風物詩でもありました。

まだ辺りはほの明るいが、東の山の端には淡い月がかかっています。

 

←前項  

八女方言歳時記へ戻る

 

 



ページの上段へ PAGE UP